LIVE REPORT

2005年から始まった「SHIBUYA HEART ATTACK!」。渋谷の8つのライヴハウスに2日間で72組のアー
ティストが出演するという、このイベント。低料金で多くのバンドのライヴを体験できるとあって、この2日間の
渋谷の街はバンド、そして音楽一色に染まった。今回ONPOO.netでは、各会場1アーティストずつ……
つまり、「全会場をまわる」ことをテーマに「SHIBUYA HEART ATTACK!」というイベントに触れることにした。

●取材:西沢八月  ●撮影:東京神父

■11月24日(土)■TAKE OFF 7/SHIBUYA LUSH/渋谷屋根裏/SHIBUYA O-nest

かげぼうし  まず最初に向かったのは、東急ハンズの目の前、楽器店や大型スタジオが近隣にあるなど、ミュージシャンには嬉しい立地条件の「TAKE OFF 7」。ビッグバンドにも対応できる広いステージや、さまざまなマンスリー企画が特徴のライヴハウスだ。このステージで演奏するかげぼうしは、大塚勇里(vo,g)、金澤直樹(b,cho)、滑川 毅(ds,cho)の3人組。6月にリリースされた1stアルバム『アンダンテ』も好調の文学系エモロック・バンドだ。ギターの力強いリフから始まったステージ。大塚は低めにギターを構え、トレードマークであろうメガネを曇らせるほどの熱気を放ちながら熱唱する。振り絞るように歌う彼の声は、男から見ても魅力的だ。それに絡む金澤のコーラスがまたカッコいい。骨太なサウンドと、どこか男のセンチメンタリズムを感じるかげぼうしのパフォーマンスに熱く胸躍った時間だった。

ザ・ストライカーズ  児童会館の坂を上がったところにあるのが「SHIBUYA LUSH」。ライヴだけでなくクラブとしても機能する渋谷の隠れ家的存在のハコだ。どこかアンダーグラウンドな匂いがする空気の中、ダンスパフォーマンスから始まったザ・ストライカーズのライヴは、まさにエンターテイメント! 自分たちのルックスを逆手に取ったかのようなパフォーマンスと80年代を感じさせる胸キュンサウンドは、一周回ってカッコいいとしかいいようがない。自分たちの信じた音楽を何の曇りもなく全力で披露できるいさぎよさと“汗が飛び散る”過剰なまでのサービス精神に、会場に詰め掛けた観客の誰もが、心の底から笑え、音楽を楽しめたに違いない。いや、いちばん楽しんでいたのは、ストライカーズ自身かも!?

ザ・ガールハント  スペイン坂スタジオやパルコなどが集まった このお洒落な地域に似つかわしくない(!?)熱いライヴハウスが「渋谷屋根裏」だ。ザ・ガールハントのステージは、扉までギュウギュウに詰まったファンの熱気で酸欠状態だった!! マスザワ(vo,g)とチバ(vo,g)のダブルヴォーカルを擁するこのバンド。ギターを主体とした、とびきりのリフに、ふたりの声が交互に、そして時に重なって絶妙なハーモニーを生んでいく。会場の空気を読む才能も抜群で、見ているだけでニコニコしてしまう楽しい空間。ライヴ途中のトラブルさえ絶妙のトークで乗り切ってしまうのも、まさにライヴバンドゆえの余裕なのだろう。この日披露された新曲も彼らの勢いが伝わるギターオリエンテッドなナンバーだった。

ヒダリ  円山町のド真ん中にある「SHIBUYA O-nest」。洒落たウェイティング・スペースもあり、くつろげてライヴを見ることのできるハコだ。この会場でライヴを行なったヒダリ。まさか演奏中にこんな楽しいハプニングが訪れようとは誰も予想しなかったことだろう。外国人プログラマーのジャスティン・ベイコンをセンターに、太田ヒロシ(g,vo)と上月大介(b)を左右に配置した3ピースの彼ら。ジャスティンの生み出すビートに合わせて、どこかフワフワした太田のヴォーカルが観客との間にイイ感じのグルーヴを生み出していく。するとライヴ後半に男性から女性へトランスフォーム(女装した)したジャスティンが観客の中へ乱入! 女性客を肩に担ぎ、ステージへ! このパフォーマンスには会場の誰もがびっくりし、大笑い。しかし、この想定外の出来事も、ヒダリの音楽の中では自然に感じてしまえるのは、じつはすごいことなのだろう。



11月06日(火)@HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 LIVE REPORT

いなかやろう  さて、イベント2日目。最初に向かったのは、パルコの裏手にある「SHIBUYA CYCLONE」。今年で10周年を迎えたハード系のライヴハウスだ。今日のこのステージにはハードなイメージのCYCLONEとは少し趣向の違った、いなかやろうが出演していた。6月に初のフルアルバム『いなかやろう』をリリースしたばかりの彼ら。ドキヨシヒロ(g,vo)とナカダやんば(b)の男性チームにオシダチサヨ(ds)とアサミさん(kb)の女性チームからなる混合バンドだ。日本でいちばん上手いことを言う男(笑)、ヨシヒロのおもしろトーク(?)とリラックスした雰囲気が、なんだかライヴハウスにいることを忘れさせてしまうようだ。犬の散歩のことを歌ったナンバーや新曲「ペパーミント」など、彼らならではの世界観と透明なポップソングの波に、ついつい時間を忘れて聴き入ってしまうのだった。

H.  電車のホームからも見える、渋谷駅からいちばん近いライヴハウス「DESEO」。この日、自宅から自転車で来たというムライジョウ(vo)率いるH.のライヴは、11月後半の肌寒い空気も吹き飛ばしてしまいそうな元気のよさだ。演奏前の押し付けがましいアオリ(笑)といい、なんだか体育会系のノリが素敵な彼ら。シャンプーを変えて絶好調のムライは、ヘタすれば暑苦しいほどの存在感で、愛の歌だか、蕎麦の歌だかよくわからないけど、思わずキュンっとしてしまう失恋ソング「鴨南蕎麦」を歌う。EMI(b)と相川(ds)の縦ノリのビートの気持ちよさ、ツボを押さえた井口のギター。その上をまさに自由に泳ぐムライのヴォーカルは、好き嫌いに関わらず、そこにいるすべての人を元気にさせてくれるハッピーなものだった。

ネズミハナビ  今年で25周年を迎えた「Stage House La.mama」は多くの有名アーティストを輩出した老舗のライヴハウス。このLa.mamaのステージにグレッチのホワイトファルコンを抱え、色気のある吉田諒(vo,g)の吐き捨てるようなスタイルの歌が響く。ネズミハナビは吉田諒(vo,g)、高橋真樹(b)、高橋登夢(ds)からなる3ピース。テクニカルなベースと切れ味鋭いギター、そしてシニカルな歌詞が印象的なバンドだ。演奏中の3人から醸し出されるオーラは、軽い気持ちで近づけば怪我をしそうな緊張感が漂うもの。相反するさまざまな出来事の中、苦悩し、葛藤する。それをありのまま、受け入れ、隠さず表現する……。どこか人間クサイ、ネズミハナビの生々しいサウンドは、誰もが言えずにいる本音を代弁するかのように感じた。

トレモロイド  多くのクラブやライヴハウスが立ち並ぶ地区、渋谷区円山。「SHIBUYA O-Crest」は国内に留まらず海外のアーティストの使用も多いライヴハウスだ。このステージに立つのは、10月に初アルバムとなる『5 meters high and swimming』をリリースしたばかりのトレモロイド。小林陽介(vo,g)と郁太(kb,sampler)の兄弟を中心とした5人組だ。陽介のリッケンと紅一点のギター山口実苗が弾くテレキャスターのサウンドのブレンドぐあいが心地いい。キャッチーなメロディを洗練されたアレンジで聴かせる実力派の彼ら。この日演奏された「a happy song」や新曲「スローモーション」は、UKや70’sのフレイバーの効いたサウンドと暖かさや滑らかさ、そして、どこか懐かしさを感じさせるものだった。

 72組という普段ではとても見られないバンドのライヴを(もちろんすべては見られるわけではないが)体験することができる「SHIBUYA HEART ATTACK!」。ここで見つけた新しいバンドとの出会い、そして人との出会い、ライヴハウスとの出会い。こういったイベントは自分の視野を広げることのできる貴重な体験だ。今年は、翌日の恒例の後夜祭(@Shibuya O-East)に加えて、前夜祭(TOKYO FM渋谷スペイン坂スタジオ)までも行なわれた当イベント。来年はどんなバンドが集まり、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、今から来年が待ち遠しい限りだ。