SPECIAL LIVE REPORT
●取材:西沢八月  ●撮影:田上知枝(ONPOO.net編集部)
 多くの言葉よりも、放つ音で言葉以上の傷跡を残していく……。
 ライヴハウス関係者や、対バンしたバンドなどから絶大な評価を受けるバンド、アルカラ。切ないまでの音像を緻密に積み重ねるそのサウンドは、口コミを通じて神戸から関西~関東へと北上中だ。
 まるでそのことが日常の一部のように、さらっとステージに登場した4人。飾り気も何もない自然体の彼らが音を出した瞬間に、今まで思っていた先入感はすべて吹き飛ばされた。これまでに経験してきたさまざまな音楽の概念が、この一撃で吹き飛ばされるような衝撃! 
アルカラ
vocal,guitar 稲村太佑
 ステージから放たれるその音像は、攻撃的でありながら、巧みに緩急を交え、聴く者に油断の隙を与えないほど。“ノる”とか“聴く”というよりも、その圧倒的な存在感と音の洪水に飲み込まれないように踏ん張る、といった感じだ。
 ギターを抱えて歌うヴォーカルの稲村の声は、時には雄弁に、時には叙情的に訴えかけるアルカラのサウンドの道先案内人。また、彼はヴォーカリストらしからぬギターで、コードだけでなく、田原のギターとのコンビネーションの他、ライトハンド等のソロ的なプレイもこなす。


 アルカラにおいて、そのサウンドメイクの間違いなくキーマンであろうギターの田原は、ストラトから生み出されるシングルコイル特有のソリッドでエッジの効いたトーンで、バッキングでは聴く者の心をエグるかのように突き刺し、ソロなどで紡ぎ出されるワウを絡めたフレーズは、まるで生き物のように絡みついてくる。
 また、下上(b)はローミッドを中心とした絶妙なセッティングのトーンで、疋田(ds)と共にアルカラの楽曲をぐいぐいと引っ張っていく。
 それぞれのプレイヤーが自己主張しながらも、バンドサウンドは崩壊することなく、一つの沸点に向かって突き進んでいく。それは、まさにリアルなライヴバンドだからこそできる技と言えるだろう。
 ひたすらに自己の内面に向かっていくかのようなライヴ。それは修行僧が何か答えを探すかようなストイックささえ感じさせる。そのスタイルは、積極的にメッセージを伝えるというよりも、自分たちのパフォーマンスで観客に何かを感じさせるものだ。
 気がつけば、あっという間に終わってしまったアルカラのライヴ。ライヴハウスにいた多くの人が、この混沌の中にまだまだ身を置いていたいと思ったに違いない。彼らはどこに答えを求めていくのだろう? アルカラの旅はまだまだ続いていく……。


vocal,guitar 稲村太佑  guitar 田原和憲