SPANK PAGE
●取材:西沢八月  ●撮影:東京神父


曲は生もの。ライヴでは毎回アレンジを変えていきたいくらい
――今回のミニアルバム『I Go Home』は曲順にすごく悩んだんじゃないかと思ったんですけど?

仲手川:いちばん悩んだのは、1曲目に何を持ってくるか……。全部で5曲のミニアルバムなので、1曲目の印象が最後まで続いてしまうじゃないですか? そういう意味で、曲順にはすごく悩みました。

――結果的にはメンバーで話し合って決めた?

仲手川:そうです。

――1曲目にキャッチーな「zero」を持ってくることで、ポップな歌ものバンドだって見られてしまう危機感みたいなものはありませんでした?

仲手川:ありましたね。本当は3曲目に入っている「go」と、どっちを1曲目にするか悩んだんです。僕らの本質的な部分では「go」を押したい気持ちがあったんですよ。この曲は僕たちのこれからの方向性を示す意味でも重要な曲だったから。でも今回は5曲入りのミニアルバムだから、3曲目でも大丈夫だろうって。これがフルアルバムだったら、また違った曲順になったかもしれないですね。今回は1曲目に耳に入りやすい曲にしようってことで、今の曲順になったんです。

――試聴機なんかに入った場合、1曲目の印象って大切ですものね。ちなみに、今回のミニアルバムを作る時に、“こういう作品にしたい”といった構想はありました?

仲手川:あまりドラマティックなものにはしようと思わなかったんです。5曲という決められた枠の中で、いろいろな僕らを見せていきたかった。プレゼン的なものにしようという意図もありました。

――選曲はどんな感じだったんですか?

仲手川:何曲かあるストックの中から、いちばん良い5曲を入れました。

――『I Go Home』には、空間や浮遊感を感じさせる曲と、牧歌的だったりフォーキーなものをべースにした曲のパターンがあると思ったんですど?

山下:意識してそうしているといったことはないですけどね。
大成:しいて言えば、「You and me」は他の4曲とは違う捉え方をしているかな。

――どの曲を聴いても、アレンジの中で必ずフックというか、“おっ”という部分を入れてますよね?

山下:それは自分たちのアイデンティティというか、ヴォーカルだけのバンドにはしたくないって気持ちですね。

――「canvas」なんかは、優しいメロディが続く曲だけど、前半と後半とでガラッとアレンジが変わりますよね?

仲手川:あの曲は最初から最後まで、ずっとゆったりとしたイメージの曲だったんです。でもそのままのアレンジだと、演っていても聴いていてもつまらない。なので、演奏していく中でどんどん変化していくアレンジにしたいって思ったんです。それをリズム隊に提示して、作っていきました。根本に、演っていてつまらないものは嫌だという気持ちがあるんです。

――SPANK PAGEの曲は、ループ的なフレーズを使いつつ、そこにさまざまなものをブレンドしていくような感じがありますよね?

山下:じつはそこまで綿密に考えてアレンジしているわけじゃなくて、作っていく過程の中で変化していく感じなんです。

――なるほど。では、曲はどんな感じで作っていくんですか?

仲手川:僕が弾き語りのような形で原曲を持っていくんです。それを聴かせて、それぞれのメンバーにイメージを受け取ってもらう感じです。そこでまずどういう曲にしようか話し合ったり、または僕の中で“こういう曲にしたい”というイメージが先にあるものは、それを説明して作っていきます。

――スタジオで作っていく感じですか?

仲手川:その場というよりは、一度それぞれが持って帰って……、考えてくる人もいれば、考えてこない人もいるんですけど(笑)。
山下:スタジオでも曲はどんどん進化していくし、ライヴをやっていく中でも少しずつだけど、進化していくんです。
仲手川:アレンジはライヴでは毎回変えていきたいくらい。それくらい曲は生ものだと思っているので、一度演奏したら少し変えてみたいんです。今の僕らというか、リアルタイムの僕らの音を聴かせたいんです。アレンジするのは大好きですね。

――ライヴバンドでありたい?

仲手川:基本はそうでありたいと思っています。

インタヴュー風景

今回は理想どおりの狙った音で録ることができた
――SPANK PAGEは山下君と伊藤君というふたりのギタリストがいるわけだけど、住み分け的なところはどうしているんですか?

山下:そのへんはずっと昔から難しいところではあるんだけど(笑)。最近は、お互いに気を遣うよりも、良いフレーズが出たら、それを生かす方向で考えています。例えば僕があるフレーズを弾き出したら、そこから広げていく、みたいな。以前は全部の楽器をフラットに考えていて、どれも出ている感じに考えていたんですけど、そういうのは止めて、フレーズ重視みたいな感じではいます。

――それぞれのギタリストの役割的なものはあるんですか?

山下:伊藤はアルペジオや装飾音的なところを弾いていて、僕はガツンっというか、目立つところを弾いています(笑)。

――仲手川君もライヴではギターを弾きますよね? そうするとトリプル・ギターになりますが?

仲手川:ギターが3人というよりも、ヴォーカル、リードギターの山下、大悟(伊藤)とキーボードの若林、という分かれ方になっているんです。僕と山下は前に出るというか、先に決めたことを弾いていて、大悟や若林が、それに対してどうアプローチをしていくかを考えていますね。だから、僕らよりも彼らのほうが大変だと思いますよ。

――山下君のギターの音色って、今の流行というよりも、往年のロックギター的なサウンドを意識しているように感じるんですけど?

山下:そうですね。メンバーみんなそうなんですけど、僕はけっこう古い音楽が好きなんです。だから流行のナンパな音は……。
仲手川:大嫌いなんだよね(笑)。
山下:そう。だから、それが滲み出ているんじゃないかと。

――今回は、ギターをわりと小さいアンプで録っていませんか?

山下:そうです。全曲とも、小さいアンプで録っています。

――ギターの音が、大きなキャビネットで鳴っているというよりも、小さなアンプを箱鳴りさせている感じがしたんですよ。

山下:その通りです。今回はレコーディングの時から、音を作り込んで録音したいって思っていたんです。前回のアルバムの時は、それこそ出た音をまとめていくような作業だったんですけど、今回は狙った音で録ることができましたね。

――メンバー的には流行りものよりはルーツ的な音楽が好きなんですか?

仲手川:僕以外はそうですね。僕は昔の音楽は聴かないんです。今流れている音楽の中で曲を作り、そうじゃないルーツ的要素を持っているメンバーがアレンジするという。僕の中から古いものが出てくることはないですね。

――それはある意味、SPANK PAGEならではの曲の作り方な気がします。でも、曲を作る側とアレンジする側でギャップみたいなものを感じることはありませんか?

仲手川:感じますね。例えば、僕が最近の洋楽アーティストで、“この曲すごいカッコいいんだよ”って言っても、「そのバンドのルーツはこれだよ」って言われちゃうんですよ(笑)。でも、僕はそこはわかっていても興味はないんです。


リスナーに迎合せず、スピリット的なものを変えずにやっていきたい
――そもそも、このバンドはどういういきさつで結成されたんですか?

山下:もともとは同級生です。ギターやベースを持っているヤツが集まってコピーバンドをやっていた感じです。

――最初からルーツ的な音楽をコピーしていたわけじゃないでしょう?

大成:いや、最初にコピーしたのはクリーム(注)なんです。
(注)クリーム〈1966-1969/世界を代表するギタリスト、エリック・クラプトンが在籍した英国のスーパーバンド。ブルースを触媒とした長時間にわたるインタープレイを聴かせる、ロック史における最重要バンドの1つ〉


――それはかなりキテますね(笑)。

大成:昔から好きだったんです。父親とかの影響で、レッド・ツェッペリンも好きで……。

――最初にバンド名を聞いた時、聴けるサウンドとのギャップに、あれっ?と思ったんですけど、そういうことだったんですね。

山下:バンド名を決めなきゃいけない時に無理やり決めた感はありますけどね。

――初期はどんな音楽性だったんですか?

大成:もっとわかりづらかったですね。聴いてもらわないとわからないでしょうけど。
山下:初々しさはゼロですね(笑)。玄人なアレンジで、でも演奏できてない、みたいな。

――じゃあ、今はだんだん演りたいことと、実力のバランスが取れてきた感じですか?

山下:そうですね。
大成:あとは、どう聴こえているのかってことに注意するようになりましたね。自己満足だけだとダメだし、自分たちの許せる範囲の歩みよりで、受け入れてもらえるものをやっていきたい。そういう耳がみんな肥えてきたのかな。

――じゃあそういう意思を持って作られたのが今回のミニアルバム?

山下:そうですね。自分たちの方向性を提示したいっていうのがありました。フルアルバムにしようって話もあったんですけど、多くの曲を入れて焦点がぼやけるよりも、コンパクトでビシっとしたものを作りたかったんです。

――アルバムを出す前と後では何か変わりました?

仲手川:いちばん変わったのは自分たちだと思います。方向性を再確認することができましたね。それぞれのヴィジョンをそろそろまとめようという話はしていて、それをどうにか提示したかった。このミニアルバムを出すことで、何をやりたいのか、どう見られたいのかということの意思は統一できたと思います。

――ドラムのメンバーチェンジも影響はある?

仲手川:それはやりたいことをやるためなのかな。このメンバーになってからも、いきなり今のような状態ではなくて、試行錯誤していたんです。でもこのミニアルバムをきっかけに、納得できる曲が生まれてきた。でも、ミニアルバムは5曲なので、ライヴでは曲数も足りないし、前の作品も混ぜて、そういった曲たちも、どれだけ新しい方向性に染めていくかというのが今回のツアーで見えましたね。

――セットリストも会場によって変えていたとか?

仲手川:雰囲気を大切にしたいんです。そのライヴハウスが持つ雰囲気と、そこで演奏する自分たちのイメージを大事にしています。どこでも同じように見えるのではなくて、自分たちのイメージに会場ごとの雰囲気を加味していきたいんです。

――会場ごとにセットリストが違うっていう点では、みんなが好きなロック・レジェンドたちもそんな感じでしたよね? だからこそブート(違法な海賊版)が重宝されたり……。そういう部分が自然に出ているのかなって思ったんですけど。

仲手川:でも、そうしないとライヴもうまくいかないですよね。スイッチをポンッと入れられるようなメンバーじゃないので、気持ちを合わせて盛り上げていかないと。

――今後は、どんなバンドになっていきたいですか?

山下:リスナーに迎合することなく、スピリット的なものは変えずにやっていきたいですね。さらに、自分たちの見せたい部分を尖らせていきたいなって思っています。


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