
●取材:西沢八月 ●写真:JOHN.C.B

“ライヴにこそ真実がある!”をキャッチコピーに開催されてきたLIVESTAR’s FES。今回も個性豊かな6つのバンドを迎え、もはや、このFESの聖地とも言えるであろうShibuya O-WESTで開催された。
SEと重なるように始まった「1time 1nova」。シンプルにループされるリフに演奏が重なり、序々にバンドサウンドになっていく。トップバッターとなった
ResponseはSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)への出演も果たした実力派バンド。ギブソンのSGを使い、オーソドックスなフレーズやエフェクティヴかつ感情的なプレイを生み出すOdgeは色気のあるギタリスト。Hikaru(b)は「スカート」のイントロでも聴かれたように、シンプルながら印象的なフレーズで曲を引き締めていく。そして、時にはメインヴォーカルを取り、まさに歌うドラマーでもあるMiduhoに、「蜜柑星交響曲」ではギターを置き、熱いパフォーマンスで観客をあおったChiba(vo)。ブリットポップやソウル、ブルースなど、さまざまな音楽を呑み込んだ雑食性と個性豊かな4人が集まったスケールの大きなパフォーマンスは、これまでのLIVESTAR’s FESでは見られなかった大人の色気とカッコ良さを感じさせるものだった。
来年の1月5日にホームグラウンドである稲毛K’S DREAMでの初ワンマンを控えた
Jeeptaは最初からやる気だった。戦闘態勢というか、このイベントを自分たちのモノにしてやろうという意気込みが随所にみられるパフォーマンスを見せてくれた。
1曲目の「LOOP」から客席に向かって挑発的にフレーズをぶつけていくchoro(g)、全身を使いセットからはみ出さんばかりの勢いの青木奈菜子(ds)、まるで何かの生命体のような躍動感のあるフレーズで捻らせるサトウ ヒロユキ(b)、そして吐き出すように、何かを威圧するようなイメージさえ感じとれた石井 卓のヴォーカル。彼らの怒涛の演奏は、まるで押し寄せる津波のように観客を呑みこんでいく。この日のライヴに対して我々オーディエンスは、ノルとか楽しむとか、そういったものの前に、彼らの圧倒的な演奏に足元をすくわれないように踏ん張っていた、というほうが正しかったのかもしれない。新曲の「シナリオ」、そして「リコール」と、破壊力抜群の楽曲を観客にぶつけ、存在感を見せ付けていった。
以前のストラトキャスターからレスポールへと愛器を持ち替えた山下(g)の操るボウが、まるで魔法の杖のように弦をはじく。それはZEP(レッド・ツェッペリン)のジミー・ペイジを彷彿させるシルエットだった。ワウを絡ませたアヴァンギャルドなプレイから流れるように始まった「mellow」。
SPANK PAGEのライヴは、ロックのダイナミズムを充分に堪能させてくれるものだった。総勢6人のメンバーから繰り出されるサウンドの壁は、会場をあっという間に瑠璃色の音の渦の中に巻き込んでいく。それは細かい粒子の流れに呑みこまれていくかのような感覚だ。それぞれの個性豊かなプレイヤーたちが、緻密に重ね、構築していく音楽模様は、油絵のごとく重厚で味わい深いが、かといって決してトゥー・マッチではない絶妙なバランス。濃厚だが胃にもたれない、どこかシルキーな透明感さえ感じてしまう不思議な空間だ。「go」での仲手川(vo)のアンニュイな歌声に誘われ、どこか異国へ迷いこんでしまったかのようだった。

続いて登場したのは、ステージに円を描くようなセッティングが個性的な
mothercoat。ギガヒトカズ(vo,g)が自分の声をサンプリングし、ループにしながら始まったのは「ピアノ」だ。おもちゃのようにアコギを鳴らし、子供のように振る舞う彼を中心に、細い体とは裏腹に図太いベースで楽曲を引っぱっていくイマダトキ(b,vo)、がっちりとリズムを支えるマツザワハジメ(ds)、そして難解なフレーズをコラージュするかのように隙間に入れ込んでいくミョウジョウマコト(g,cho)。この4人がお互いを見つめ合うようなセッティングから生まれる音楽は、荒削りだが一瞬たりとも目を離せない。さらには、彼らを影で支えるスギハラジュンペイ(PA,etc)の存在を加えた5人が生み出す即効性と緻密さが混在したステージは、ハードコア的な激しさと牧歌的な優しい肌触りが交互に耳を襲い、リスナーの心を知らぬまに掴んでいってしまう。「アングル」のような難解にも思える音楽から、「ガリレオ」のような、どこか懐かしく、こそばゆいポップチューンまでを無造作に投げつけるmothercoat。それは答えのない謎解き、悩めば悩むほど、彼らの術中にはまってしまう楽しい迷路のようだった。
第1回目のLIVESTAR’s FESにも出演した
UNISON SQUARE GARDENは、唯一の3ピースバンドながら、そんなことはモノともしない、堂々たるパフォーマンスを見せてくれた。今回、特に目を引いたのが、田淵智也(b)と鈴木貴雄(ds)のリズム隊だ。楽曲の隙間を自由自在に動き回る田淵のベースライン。以前の彼はストイックに自分のプレイの中にのめり込んでいくタイプだったが、この日の彼は内ではなく、あきらかに外に対してアピールするスタイルを取っていた。そして、大きな身体を生かした鈴木のダイナミックなドラミング。自分がどのように見られているかを意識したパフォーマンスは、プレイ以上に彼を大きく見せていた。もちろん、バンドの顔である斎藤宏介(vo,g)も、愛器アトリエZとボグナーから繰りだされるジャキっとしたサウンドと伸びやかなヴォーカルで観客を自由自在に操っていく。久しぶりに見た彼らは、こちらの予想をはるかに上回るほど、急成長を遂げていた。ひりひりするような鋭さの演奏と相反するポップ感、そして多くのライヴやイベントで培われてきたライヴバンドとしての自信。この日聴いた「ガリレオのショーケース」からは、これまでにないスケールの大きさを感じることができた。

しんしんと降り注ぐ雪のようなイメージの
sleepy.abは札幌を拠点に活動する4人組。「なんとなく」で始まった彼らのステージは、一瞬にしてO-WESTというライヴハウスの風景を変えてしまうほどの個性を持ったものだった。足元にズラリとエフェクターを並べたギターの山内憲介を中心に、上手(かみて)にヴォーカル&ギターの成山 剛を配置したステージは彼らのオリジナル。
タイトな田中秀幸(b)と津波秀樹(ds)のリズムセクションによって作られたキャンバスの上を、山内は足元に置かれた無数のエフェクターを自在に操り、ギターだけとは思えない、重厚で荘厳な空間を描いていく。「メリーゴーランド」で披露されたパイプオルガンのようなサウンドや、時に繰り返し訪れる小波のような音色……。sleepy.abの世界観を指先と足先で創造する山内の様は、ある種、崇高な儀式のように思えてならなかった。そしてユニセックスな魅力の成山の持つ無国籍な感触の歌声は、独特のタイム感をともない、静かに心に積もっていく柔らかい雪のようだった。
どのバンドも個性的で、少しも目を離すことができなかった今回のLIVESTAR’s FES。過去2回に比べ、それぞれのプレイヤーの個性や、アンサンブルとしての面白さを表現できるバンドが集まったように思える。ライヴハウス規模で展開されている
LIVESTAR’s CAMPをはじめ、全国各地にまで広がりつつあるこの波の中、今後も、優れた音楽性やパフォーマンスを持ったバンドが次々と集まってくるに違いないだろう。